ばぶさん童話 お話森の山小屋で (3/6回) 『妖精さんの背負い籠』
妖精さんの背負い籠
テーブルさんが子ども達にききました。
「妖精さんのお話をしようか?」
「ききたい」「ききたい」
「おはなしききたい」
子ども達は目をキラキラさせて答えました。
「それでは始めようね
<strong>ようせいさんのせおいかご</strong>というお話だよ。
ある時サニー坊やが私にこんな質問をしたんだ。
『ありがとうのことばがとどくのはなぜ?』
それはね、ありがとうの妖精さんが背中の背負い籠に
ありがとうを入れて届けに行くからだよ
『ごめんなさいのことばがとどくのはなぜ?』
それはね、ごめんなさいの妖精さんが背中の背負い籠に
ごめんなさいを入れて届けに行くからだよ
『ありがとうもごめんなさいも
ことばがとどかないときもあるよ。どうして?』
妖精さんが、ちょっとあわてんぼして
背負い籠の中に入れるの忘れて出かけたり
籠に入れた言葉を途中で落としたりして
籠の中身が空っぽになっていると
せっかく届けに行っても手渡せないのだよ
妖精さんの背負い籠にはふたがないんだ
だからことばをしっかり中に入れないとね
妖精さんも困っちゃうね
『せおいかごのなかにことばをしっかりいれたのに
とどかないときもあるのはなぜ?』
妖精さんはね、お家のドアや窓を
一度だけそっとノックするんだ。
けれどもね、ドアも窓も固く閉まっていると
開けてもらえないから手渡せないんだ
『どんどん・・・ってもっとつよくノックしたらきこえるよ』
そんなふうにノックしたらドアも窓も、
もっと堅く閉まってしまうことを妖精さんは知っているんだ
外側から無理やりあけようとしてもだめなのさ
ドアも窓も内側からしかあかないんだ
だから、そっとノックするのだよ
『どうしてようせいさんのせおいかごにはふたがないの?
ふたがあればことばがそとにおっこちたりしないよ』
それはね、背負い籠に蓋をするとことばが腐ってしまうのだよ
蓋をしたら呼吸ができなくなるからね。
いつも新鮮な風に触れているからことばはみずみずしいのだよ。
『ようせいさんのせおいかごってこわれちゃうことがある?』
時には壊れちゃうこともあるかもしれないね。
妖精さんにとって背負い籠はとっても大切な道具なのだ。
だから妖精さんは背負い籠の手入れを毎日しているよ。
籠が壊れそうになっているのを見つけるとすぐに直して、
また使っているよ。直すのがとっても上手なんだ。
『ようせいさんのせおいかごってどのくらいのおおきさなの?』
大きいのもあれば、小さいのもあるよ。
というよりも、ことばにふさわしい大きさに
大きくもなれば小さくもなる不思議な籠だよ。
『ようせいさんのせおいかごにはことばをたくさんいれられる?』
一度にあれもこれものことばは入らない。
大抵は一つ入ると満杯だよ。
けれども妖精さんは沢山いるから大丈夫さ。
子ども達は身を乗り出して訊きました。
「ねえ、ベンチさん。たくさんってどのくらいたくさん?」
そうだなぁ、数えきれないくらい沢山いるよ。
みんなのワクワクドキドキを全部合わせたくらい沢山だよ。
子ども達はベンチから立ち上がって
「わー、すごいなぁ」って叫びました。
~つづく~