ばぶさん童話 (5/5回) ぷりプリシリーズ第5話 『ぐーぱぁあ怪獣』
第5話 ぐぅうぱぁあ怪獣
慈雨(じう)にいちゃんがイケル池の周りをてくてく歩いて行くと
じゅういち神社の境内で
リームくん、シュークちゃん ココラちゃん
ミルキちゃん ピイラちゃん ザアラくんの6人が
境内中を走り回ってあそんでいました。
どの子のお尻にもバンダナがひらひらくっついています。
「ははん。みんなしてしっぽとりをやっているんだな」
たった今、
いちばんかけっこの早いリームくんが鬼になったばかりでしたが、
あっという間に色とりどりの6本のしっぽが
集められてしましました。
みんなは走りつかれていたこともあり
『しっぽとり』の遊びにちょっと飽きていました。
「やーめんっぴっ」とザアラくんがいうと、
みんながまねっこして「やーめん・ぴっ」と
声をそろえて言いました。
「あっ、慈雨にーちゃん。なんかしてあそぼう」
「たのしそうだね。僕もしっぽとりの仲間にいーれーて」
「だーめっよっ。もう『しっぽとり』はうりきれでーす」
「それは残念」
「ねえ、なんかしてあそぼ。」
「おもしろいのがいい。」
「こわいのがいい。」
「『きゃーっ』てにげるのがいい。」
「それじゃあ、狼ごっこはどうかな。」
「やだぁ。それきのうやったから、きょうはちがうのがいい」
「それなら・・・、おば おば・・・」
「おばけごっこやだぁ」
「ではでは、おばおば・・・おばさんごっこにしよう。」
「おばさんごっこ、こわくないからやだぁ」
「ふっふっふっふ。ただのおばさんなんかじゃないんだぞ。
かいじゅうのおばさん。ぐぅうぱぁあおばさん怪獣だあ」
そういいながら慈雨にいちゃんは、
リームくんから6本のバンダナを、
さっとかすめ取ると自分のズボンのベルトに
ぎゅぎゅっぎゅぅと押し込んで
「六本しっぽの、『ぐぅうぱぁあおばさん怪獣だぞ』
ぐぅ~。ぱぁ~。」
「きゃぁ~~~あ」
6人の子供は一斉に逃げだしました。
「おまち。どこへにげても、ふっふっふっふ。むーだーよ。
あたしが、おまえたちをひとりのこらずぐーぱーにしてやるぞ。まてぇ~~」
慈雨兄ちゃんは両手をにゅぅ~と前に伸ばすと、
てのひらをぐーぱーしながら
「ぐぅう、ぱぁああ。ぐぅう、ぱぁああ。
ぐぅう、ぱぁああ。ぐぅう、ぱぁああ。
ぐぅう、ぱぁああ。ぐぅう、ぱぁああ。」
とおかしなかっこうで足踏みしながら
6人を追いかけまわしました。
最初につかまったのはココラちゃん、ピイラちゃんの二人でした。
「ぐぅう、ぱぁああ。だっはっはっはぁ。
ぐぅう、ぱぁああ。んまぁ、なんておいしそうなこどもたち。
ちょっとさわってみよう。ぷにょぷにょ。
んまぁ、なんてやわらかそうなお肉だこと。
ちょっとにおいをかいてみよう。くんくん。
んまぁ、なんておいしそうなにおい。
ちょっとなめてみようかしら・・・」
慈雨にいちゃんは舌をぺろぺろとだしたりひっこめたりしました。
そのとき、たったかたったったぁと
リームくんとシュークちゃんが超スピードで助けに来ました。
ところが、ぐぅうぱぁあおばさん怪獣はひょいとよけたので
リームくんとシュークちゃんはごっちんこ。
「あいたたた」「いたたた」
と二人しておでこをさすっているうちに
「ぐぅう、ぱぁああ。だっはっはっはぁ。ぐぅわっし。
おまえたちもつかまえたぁ。
つぎはおまえだぁ~~~」
とぐぅうぱぁあおばさん怪獣がにゅうううと腕を伸ばし、
ザアラくんのズボンのお尻をつかみました。
「やーめんっぴっ」
とザアラくんは叫びましたが、
「だっはっはっはぁ。ぐぅう、ぱぁああ。
だーめ、だーめ、だっはっはっはぁあ、だぁ~~~め」
「きゃああ」
ぷりぷりどどどっどっか~~ん。
とミルキちゃんが見事な体当たりをしたので、
子供たちはみーんな助かりました。
「いてててて。よくも、 よくも助けたな。つぎはおまえだ。」
ぐぅうぱぁあおばさん怪獣は
「ぐぅう、ぱぁああ。ぐぅう、ぱぁああ。
ぐぅう、ぱぁああ。ぐぅう、ぱぁああ。
とおかしなかっこうで足踏みしながら
こんどはミルキちゃんばかりを追いかけまわしました。
ぐるぐる走って遊んでいるうちに、
ぐぅうぱぁあおばさん怪獣の弱点が解ってしまいました。
ぐぅうぱぁあおばさん怪獣は6本のしっぽを引っこ抜かれると、
とたんにパワーダウンして動けなくなるのでした。
「ぼくかいじゅう」
「あたしもかいじゅう」
すると今度はみんながぐぅうぱぁあ怪獣になりました。
なんだかまた『しっぽとり』みたいですが、さっきとちがうのは
「ぐーぱーぐーぱ」といいながらみんなして走っているのでした。
―完―